観音様の怒り 瑞浪市陶町猿爪
江戸時代末期、猿爪村には中馬街道があり、多くの馬や人が通っていた。ところが馬を引いて猿爪村に入ると、突然馬が止まり前へ進まなくなる。同じ場所で大八車を引いて通りかかると、車輪が外れて立ち往生してしまう。これは何かある。祟りじゃないかと噂をし始めた頃、急病人がでた。村の人が数人で病人を戸板に乗せて運ぶ途中、苦しみだして山に向かって指さしたとたん息絶えてしまった。
やはり何かあると、指さした山に入ると、倒れた木のそばに汚れた観音様を見つけた。経をあげながら洗い清め街道横に安置され村人みんなで供養した。すると観音様の怒りが消えたのか、何事もなくここを往来できるようになりましたとさ。
今も観音様は街道横で花をたむけられ、通行人を見守っています。
30 方言昔話(3) 観音様の怒り
これは江戸時代の終わりころの話しだけんどのー。
その頃の猿爪村には村の真ん中あたりを中馬街道が通っとってのー、信州から米や酒らを尾張に、尾張から塩や茶碗やらを信州に運ぶ馬や人が結構往来しとったんや。
信州の人が、馬を引いて吹越峠を越えてやれやれと猿爪村のある所まで来るがさいと、突然、馬が嘶き前へ進みゃへん。前足をあげたり後ろ足で蹴ったりするもんだから、馬に積んだ荷物はわやだわさ。馬引きはうろこいているが、そんでも何とか馬をなだめて荷物があんじゃないのを確認して、やっとこさで通り過ぎるのやった。こなぁだも、大八車を
引いて通りがかった隣村の人が、同じ場所で車の車輪が外れて立ち往生しとったげな。
そんなようなことが何べんかあったもんだから、村人んたぁが「これは何かある。祟りでもあるんじないか。」と噂をし始めたころ、村に急
病人が出たんだと。ほんだもんで、村の衆数人で急病人を戸板に乗っけて明知の医者まで向かう途中にのー、この地点まで来るちゅうと、病人は急に頭を痛がってのー、頭を上げるがさいと何かを叫びながら山に向って指差ーた途端、息絶えてしまったと。
庄屋どんと村人数人がやっぱ何かあると、病人が指差ーた山に入ってみるがさーと、倒れた木のくろで雑草に埋もれたばばぁ馬頭観音さんが見つかってのー。庄屋どんが「こりゃあ観音様の怒りだ。」「早いとこ水をぎょうさん汲んで来い。」と叫ぶがさあと、庄屋どんが中心になって経をあげながら観音様を心こめて洗い清めたそーな。綺麗になった観音様は街道横まで運ばれ、新しい土台に安置されるがさいと村の衆みんなで花を手向けて不遇をお詫びし、えらぁおっさんを呼んで経をあげてもらったげな。
そしたら、じっきに観音様の怒りは癒えたのか、何事もなくの往来できるようになったとさ。この馬頭観音は、現在、猿爪本町の山善さん宅前で花を手向けられ、今も通行人を見守っておらっせる。
(もっと知ろう陶より)