芦俣三十三所観音石窟(三河街道)
三十三所観音
三十三所観音とは、西国三十三所観音霊場(室町期には秩父・坂東三十三所霊場も設定)のそれぞれの本尊三十三体をーカ所に祀ったもので、本来は、ここに定められた西国三十三カ寺(後記)を順拝するのが本来の信仰ですが、それには11ケ月余りの月日と大変な路金が必要で、誰もが実現できることではありませんでした。
- 第一番 青岸渡寺 和歌山県 如意輪観世音菩薩
- 第二番 金剛宝寺 和歌山県 十一面観世音菩薩
- 第三番 粉河寺 和歌山県 千手千眼観世音菩薩
- 第四番 施福寺 大阪府 十一面千手千眼観世音菩薩
- 第五番 葛井寺 大阪府 十一面千手千眼観世音菩薩
- 第六番 南法華寺 奈良県 十一面千手千眼観世音菩薩
- 第七番 岡寺 奈良県 如意輪観世音菩薩
- 第八番 長谷寺 奈良県 十一面観世音菩薩
- 第九番 南円堂 奈良県
- 第十番 三室戸寺 京都府 千手観世音菩薩
- 第十一番 上醍醐 准胝堂 京都府 准胝観世音菩薩
- 第十二番 正法寺 滋賀県 千手観世音菩薩
- 第十三番 石山寺 滋賀県 如意輪観世音菩薩
- 第十四番 三井寺 滋賀県 如意輪観世音菩薩
- 第十五番 今熊野観音寺 京都府 十一面観世音菩薩
- 第十六番 清水寺 京都府 十一面千手千眼観世音菩薩
- 第十七番 六波羅蜜寺 京都府 十一面観世音菩薩
- 第十八番 六角堂 頂法寺 京都府 如意輪観世音菩薩
- 第十九番 革堂 行願寺 京都府 千手観世音菩薩
- 第二十番 善峯寺 京都府 千手観世音菩薩
- 第二十一番 穴太寺 京都府 聖観世音菩薩
- 第二十二番 総持寺 大阪府 千手観世音菩薩
- 第二十三番 勝尾寺 大阪府 十一面千手観世音菩薩
- 第二十四番 中山寺 兵庫県 十一面観世音菩薩
- 第二十五番 播州清水寺 兵庫県 十一面千手観世音菩薩
- 第二十六番 一乗寺 兵庫県 聖観世音菩薩
- 第二十七番 圓教寺 兵庫県 六臂如意輪観世音菩薩
- 第二十八番 成相寺 京都府 聖観世音菩薩
- 第二十九番 松尾寺 京都府 馬頭観世音菩薩
- 第三十番 宝厳寺 滋賀県 千手千眼観世音菩薩(観音堂)
- 第三十一番 長命寺 滋賀県 千手十一面聖観世音菩薩三尊一体
- 第三十二番 観音正寺 滋賀県 千手千眼観世音菩薩
- 第三十三番 華厳寺 岐阜県 十一面観世音菩薩
西国三十三所観音霊場に選ばれた各寺の観音は、千手が十五カ寺(滋賀県長命寺の千手・十一面・聖の三観音を千手として)、十一面と如意輪が各六カ寺、聖観音が三カ寺、不空羂索・准提・馬頭が各ー力寺の七種類の観音像で、秩父(のち三十四所)・坂東霊場もこの七種類の観音のいずれかが本尊であり、村々の「三十三所観音」もこれに基づいて、光背上部や台石に・「何番」と刻まれていて、それぞれの観音像が彫られ、ここに合掌すれば「西国順拝と同じ功徳が与えられる」という西国三十三霊場のミニ版なのです。
西国三十三所観音霊場に代わる地方の霊場が設けられるようになり、県内では江戸前期には円教寺(武儀郡白谷村・現廃寺)を一番とし、新長谷寺(関市)を三十三番とする美濃国三十三所観音礼所が設けられ、元禄八年(1695)には土岐三十三所霊場も設定されました。それさえ一般庶民には仲々大変なことでしたから、この「三十三所観音」に祈願すればということで造立されたのが、村々に見られるこれらの「三十三所観音」であり、さらに簡単なのが「三十三所観音供養碑」などの文字碑です。
※注意 白衣(びゃくい)・子安(こやす)らの応現身(おうげんしん)である「三十三観音」とは全く別のものです。
芦俣三十三所観音
逆川(さかしまがわ)と呼ばれる足股川が村境いで、越すと日吉町分の芦俣、左の方は釜戸町分の足股になります。小川を越した日吉分の三和之郷芦俣のすぐの山中には明和元年(一七六四)の三十三所観音石窟があります。大湫宿~知多への三河街道沿いのもので、大湫宿の助郷村だった駄知・山田・日吉南部・稲津方面の人々には特に大切な助郷道でしたから、ここに三十三所観音を建てたもので寄進者も神田二人・八瀬沢一人など大湫宿関係一八人のほかは、これら日吉・稲津・土岐・釜戸など助郷村の人たちの名が刻まれています。ここには安永五年(一七七六)の三界万霊塔や明治四十年の甲子塔もあります。
●弘法大師(明和元・一七六四・丸・坐・三十三所観音主尊として)
足股の三十三所観音の中央仏として祀られている弘法石像です。
こうした三十三所観音は瑞浪市内では約二五カ所に建立されていますが、芦俣の三河道の三十三所観音は今から約260年余り前の明和元年(一七六四)に建てられたもので、市内でも三番目という古いものです。
瑞浪市の三十三所観音
- 1.宝珠寺 正徳四年(1714)
- 2.小高弘法堂 元文五年(1740)
- 3.芦俣 明和元年(1764) 石窟
- 4.半原斧生田 明和四年(1767)~安永(1772~1781)ら
- 5.釜戸町平山 安永三年(1774~享和二(1802)ら
- 6.増福寺 安永七年(一七七八)
- 7.禅躰寺 天明六年(一七八六)信州高遠の守屋貞治作
- 8.興徳寺 天明七(1787)~文政八(1825)
- 9.高松観音堂 寛政元(1789)
- 10.上野町宝林寺墓地 寛政五年(1793)~天保十四(1843)
- 11.明白寺 寛政七年(1795)~文政六(1823)ら
- 12.東仙寺 文化四年(1807)
- 13.信光寺 文化十四年(1817)
- 14.長見寺 文政ニ(1819)~六年
- 15.稲津町川折津島秋葉様 文政二(1819)
- 16.小塩観音堂 文政五(1822)
- 17.正宗寺堂 文政十二年(1829)
- 18.十三峠 天保十一年(1840) 石窟
- 19.竜吟峡 嘉永六年(1853)ら
- 20.清水弘法堂 安政六年(1859)~文久二年(1862)ら
- 21.清来寺 新旧三種にて四国八十八所弘法尊と共に並ぶ
- 22.半原西町屋 文政五年(1835)
- 23.土岐町下沢弘法堂
- 24.一色延命地蔵堂
- 25.正源寺
- 26.茂立
- 27.サバ口三十三所観音(白倉)
- ※未確認なものもあります。