遠い北の国から、ことしも鶴が又やってきました。宿の庄屋の娘おさきは、とても鶴をかわいがって世話をしていました。その一羽の背中に三日月の紋のある鶴がいました。北へ帰るほんの少し前のこと、猟師に撃たれたのか、いたちにかまれたのか三日月の鶴が片羽根をとられてしまいました。おさきは、とてもかわいそうに思ってけんめいに手当をしてやりましたが、夏がすぎ秋も深まって、もう少しでみんなが帰ってくる頃に、とうとう死んでしまいました。おさきはそのなきがらをひとつばたごの根本にうめてやりました。ひとつばたごは、名の通り葉が一枚づつ出ているので、片羽根の鶴と同じだと思ったからです。そして大きくなったひとつばたごには、鶴の羽根のように真っ白な花が咲くようになりました。
ヒトツバタゴ
爽やかな新緑が美しい5月、新緑の5月にはまるで雪をかぶったように純白の花が覆いかぶさり、その景観は実に見事です。
ヒトツバタゴの自生地は岐阜県・愛知県犬山市・長崎県対馬、国外では中国・朝鮮半島のごく一部と限られ、世界的にも大変珍しい樹木です。
岐阜県の中でも自生地は東濃地方が中心で、自生木は数百本ほどと言われており、3種類の中で最も希少性が高く、天然記念物に指定をされている自生地が多くあります。
ヒトツバタゴとは
ヒトツバタゴのタゴは同じモクセイ科のトネリコの一名で、 ラケット用材として利用されます。トネリコの葉は羽状になっていますが、ヒトツバタゴは一枚の葉なので『1つ葉のタゴ』 ということです。
真っ白な花が美しく、今では公園や街路樹などに植えられていて全国的に有名になりました。
当地方では「ナンジャモンジャ」、「アンニャモンニャ」「六道木」とも呼ばれています。
大湫ヒトツバタゴ自生地 (県指定天然記念物)
中山道大湫宿より恵那市へと通じる道を北へ向かい、神田(かんだ)地区に入ると朴葉沢(ほおばさわ)と呼ばれるヒトツバタゴの自生地があります。
花の咲く季節には沢全体が真っ白に染まり幻想的な美しさです。
樹齢100年を超えると思われるヒトツバタゴ。 11本もの群生は県下一の自生地で昭和34年(1959)県の天然記念物に指定をされました。11本の樹の内3本が実を付ける雌木です。
まわりには湿地特有の植物、絶滅危倶種に指定をされている「カザグルマ」や「ミカワバイケイソウ」も見ることができます。
大湫の自生地は、最もヒトツバタゴの自生環境が保たれた他に類の無い貴重な場所です。大切に守り後世に残していきたい自生地です。















