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よすけとカッパ
昔、この淵は今より水も多く、深くて魚もたくさんいました。
釣りの好きな与助は毎夜土岐川に出かけ、大きな岩に座って魚を釣っていました。ある晩いつものようにキュウリをかじりながら釣りをしていると「与助キュウリくれ」と呼ぶ声がします。目を凝らして水面を見ると、月明かりの水面にガボガボと泡が立ち丸いものがぽっかと浮かび上がりました。うわさには聞いていましたが本当にカッパがいたのです。与助がキュウリを投げると、さっと受け取って木の中に隠れました。すると、すぐに魚がおもしろいように釣れはじめました。次の晩も、次の晩もキュウリをみやげにしてどっさり釣りをして帰りました。
そんなことが幾晩も続いていましたが、ある晩、与助はキュウリを忘れて出かけました。「しまった。」と思いましたが待ちに帰るのは面倒です。いつものように岩の上に腰を下ろすと釣り糸を投げ込みました。すると、「与助、キュウリくれ」とカッパが呼びました。与助は、そばにあった細長い小石を「そうれ」と投げ込みました。それから、しばらくするとすごい勢いで釣り糸を引くものがあります。釣竿を取られまいと引っ張っていた与助は、とうとうドボーンと水の中に引っ張りこまれてしまいました。
しばらくして浮き上がった与助は、気を失ったまま、岸に押し上げられました。それからは、二度とその淵へ与助は釣りに行かなくなりました。
それから、村の人々はこの淵を「よすけ」と呼ぶようになりました。
【「ふるさと百話」より】 釜戸町まちづくり推進協議会 令和四年一月設置
【現地看板より】
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