十一面観音は十一の顔がある観音を指し、平安時代に多くの像が作られています。普通頭の上に十の仏面をつけており、前の三面は慈悲相、左の三面は念恕相、右の三面は白い牙を出した相になっていて、総ての方角に居る人々を救うと言います。
十の仏面は、①諸病の苦を取る②如来の愛護をえる。③財宝を得る。④敵の危害から守る⑤上司の庇護を受ける⑥毒蛇・寒熱の苦を免れる。⑦刀杖の害を受けない。⑧水に溺れない。⑨火に焼かれることがない。⑩天命をまっとうすることができる。というこの仏の十の誓願がこめられておりこの仏様を拝むと災害から免れると信じて、平安時代には特に盛んに崇拝されました。
前の三面は素直に仏の教えに従う人に慈悲を垂れ、左の三面は従わないで勝手なことをしている人に対して怒り、右の三面は善行の人をほめたたえ、うしろの一面にある笑面はゆとりをあらわしています。
この像はかってインドのバラモン教の十一荒神の影響を受けて五、六世紀ごろ仏教に、取り入れられたといわれています。普通、手には蓮華の花と水瓶を持っており、それ以外は与願の印を結んでいます。