★解説

十王仏とは

【冥途の旅と裁きの流れ(死後の世界観)】

■ 死後の出発
 葬儀で見送られた後、「冥途の旅」が始まる。
 最初の一週間は「死出(しで)の山」(八百里)を一人で歩く。

初七日(7日目)【裁判官】秦広王(しんこうおう) 不動明王
 生前の行いを問われるが、まだ判決は出ず、次の審判へ。

■ 三途の川
 地獄道・餓鬼道・畜生道と道が三つに分かれているため三途といいます。
 生前の行いがよかったものは橋を渡れ、比較的罪の軽い人は浅瀬を渡ることができます。悪いことをして罪を重ねてきた人は深い急流を泳ぐこといなります。
 しかし「地獄の沙汰も金次第」六文銭があれば渡し舟に乗れます(伝統的に棺に入れる)。

■ 賽の河原
 川を超えると荒涼とした賽の河原があります。
 子どもの霊は「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため」と泣きながら賽の河原の石を積みます。しかし石積みを繰り返すが鬼に壊される。それを地蔵菩薩が救済してくれる。

■ 奪衣婆と懸衣翁
 大人の魂は、奪衣婆(だついばあ)に衣を剥ぎ取られ、素っ裸にされます。それを懸衣翁(けんえおう)衣領樹(えりょうじゅ)の枝にかけ、悪事を重ねた者の衣は重く垂れ下がるので、善人か悪人か分けられてしまいます。

二・七日(ふたなのか)(14日目) 初江王(しょこうおう)

 嘘をつくと地獄行き。残された家族が供養をすると軽減可能。

三・七日(みなのか)(21日目) 宋帝王(そうていおう)文殊菩薩

 「業関」という関所があって、頭に十六の角、顔には十二の目のある鬼がいて口
から炎を噴き出して「嘘をついたら承知せんぞ。わしの目をごまかすことはできないぞ。」といわれて「宋帝王(そうていおう)」の前に出て審問を受けます。宋帝王は文殊菩薩で「三人寄れば文殊の知恵」の由来。

四・七日(よなのか)(28日目) 五官王(ごかんおう)普賢菩薩

 業江と呼ばれる川幅五百里もある大河を泳ぎます。生前悪事を重ねた者はこの大河を渡りきることはできません。

 秤で善悪を測定。嘘をつくと秤が傾き地獄へ。

五・七日(いつなのか)(35日目) 閻魔王(えんまおう)地蔵菩薩

 閻魔堂は地表から五百万里の深さにあり、七重の城壁と、四面の鉄の垣根で囲まれていて、八万の鬼と十八の将官がいます。

 閻魔王の前には、罪状を読み上げます。判決文を記録する「司命(しみょう)」と「司録(しろく)」という二人の書記官がいます。
 「浄玻璃(じょうはり)」という鏡は、いくら隠しても、生前の所行の全てがこの鏡に映し出され、善行を重ねてきた者は極楽往生できるが、悪事を重ねた者は見抜かれて地獄いきとなります。

 六地蔵が六道の入口に立ち、衆生の苦を救済します。

 しかし、家族の供養があれば、地獄へ行くのを逃れ、次へ

六七日(むなのか)(42日目) 変成王(へんじょうおう)弥勒菩薩

 この先「鉄丸所」という大きな丸い岩がごろごろしていてぶつかり合い、火花を散らしている八百里もある河原を通ります。

 未来に救いをもたらす仏。三道分岐(善道・中道・悪道)で進路が決まる。嘘をついているなければ、善道にいけます。

七七日(なななのか)(49日目) 泰山王(たいざんおう)薬師如来

 最終審判。六道(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道)の鳥居を自ら選ぶ。悪人は地獄道がよく見えて地獄道をえらんでしまいます。

百ヶ日 平等王(びょうどうおう) 観音菩薩

 恐れを除く仏。卒哭忌(そっこくき)=大声で泣くのを卒業する日。

一周忌 都市王(としおう) 勢至菩薩

 知恵で三途を離れる。正しい行いへ導く。

三回忌 五道転輪王(ごどうてんりんおう) 阿弥陀如来

 極楽往生の主。「南無阿弥陀仏」で救済される。

 以降七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌へと続き、故人の冥福を祈り続ける。

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